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新型ピアソン470は何が新しいのか①

新型とは言いますが、一体何が新しいのか?

と、疑問に持つ人も多いと思い、外観で見て分かる違いをまとめてみました。

この記事では外観の形状で如何に旧型に対して新型が改良されているかを写真つきで説明していきます。



旧型ピアソン470: 2017年暮れより製造を開始。世界レベルで走れる船を目指して建造。モールドはすべて手作業で作成。多くの人がハンディキャップに感じるであろう、特にトラピーズに乗りはじめ以上の中強風域でのパフォーマンスに重点を置いてデザインされた。


新型ピアソン470: 2022年4月より販売開始。全てのパーツを3DCADでモデリングをし機械加工により型の作成を行った。旧モデルからの中強風域でのパフォーマンスを維持し、一年中毎日乗っても長持ちして、旧型より剛性アップを目指して設計された。ピアソンマリンジャパンの470級では初めてのフルモデルチェンジ。

何を考えて新型を作るか??

船の形状はクラスルールに縛られているので、新旧の船で遠目からみてとても大きな外観的な変化は感じられないと思いますが、クラスルールで許される数ミリの公差の中で船をデザインし船のパフォーマンスを最大限まで引き出して上げなければなりません。

例えばジブハリヤードのテンションを掛けると船は歪みます。しかし折角デザインした理想の船の形状でセーリング出来ないのではデザインをした意味がなくなってしまうのでそれに負けない船が理想です。その他にも波、ティラー操作、クルーワーク等船には様々な外部からのストレスがあります。それらの負荷に耐える様にデッキやハルその他パーツの形状のデザインをしていきます。

また、デザインによる船の強さ以外にも製造の品質による強度もあります。品質による強度とは例えば補強をそこに掛かる力の方向にしっかり合わせて取り付けるなどです。補強を入れていてもそれがあらぬ方向を向いていてはそのポテンシャルを100%出し切ることができません。製造者が迷わないために印をつけたり、凹凸を作ってズレない様にしたり、作りやすい船は結果的に品質の高い船になると信じています。

PMJの他メーカーにはない強みは、設計から製造まで自社で一括して行っていることです。

これにより、製品の企画段階から製造、最終的に選手が水上でセーリングするまでを一つの理念に基づいて組み立てていくことができます。また、

  1. ユーザー

  2. サポートチーム

  3. 製造チーム

  4. フィッティング担当者

  5. 外部コンサルタント

上記すべてのフィードバック、アドバイスを直接聞き、セーラーが求める船と、PMJの製造チームが精度良く作ることができる船を両立させていきます。

通常の造船メーカーは設計と製造が切り離されていることが多く、そうすることで設計通りの型が出来上がっても、製造者の技量や双方の理念の一致・不一致で船の良し悪しが左右されてしまいます。

このような点でPMJの船の品質は良いと自身を持って言うことができます。


まとめると、

セーラーにとって良いデザイン(=速い船)かつ、

製造者にとって良いデザイン(=作りやすい船)

を作ることが目標でした。



いざ比較

ではここから新旧の船を並べてどのようなデザインの違いがあるか、またそれがナゼなのか紹介していきます。


・ヘッドステーフィッティング


旧型: マストから最も離れていて、かつ大きなストレスが掛かるヘッドステーフィッティング、旧型では大きなアンカー状の金属がヘッドステーフィッティング下部についていて、ハルと強固に接続するようになっていた。


新型: こちらは木製のより大きなアンカーを入れてハルとの接続をおこなっている。さらにハル内部に取り付けられている大型の前後方向の補強材(フォアタンクウェブ)と一体になるようになっていて旧型よりフォアデッキの構造の強度増加に貢献している。


・フォアデッキ


旧型: フォアデッキ中心寄りに段差の補強を配列。より中心部の強化に重点を置いていた。


新型: フォアデッキからサイドステーに向けて段差の補強を配列。中心には内側に縦方向に補給が一本入っているので、ちょうどフォアデッキを4等分する位置に配列されていてフォアデッキ全体を均等に補強している。

・ウォーターブレーク


旧型: ウォーターブレークは細身でスリム。また前方が直角に近くなる形状で水をしっかりとストップしていた。


新型: より大きく太くエッジを効かせた形状。さらにサイドステー取付部ギリギリまで形状を維持している。テンションを掛けたときに船がサイドステー取付部が上方向に引っ張られてすぼまる方向に力が働くが、これをしっかりと抑えるようになっている。

・マストパートナー


旧型: テーパーがかかって細身、軽量に作られていた。


新型: ボックス形状でマストの左右方向の動きを支える。FRP製品を作る上で欠かすことができない抜き勾配(型から製品を取り出すときプリンのように台形になっていないと取り出すことができない)を場所によって最小にすることでマストのガタ止めもより確実にできる配慮がされている。また取り付けられているデッキ側にも剛性アップの工夫がされていて二重に強度を増している。

・バルクヘッドハッチ


旧型: シンプルな平面でこのパーツ単体ではフニャフニャとしている。


新型: 角を多く取り入れることでとてもリジットになっている。とても地味なパーツだが最もストレスが掛かるマストステップに近いので強固にしておきたい。

・マストステップ


旧型: キールソンの上に直接マストステップパーツを取り付けていた。キールソン内部にはクラスルールで木材製の芯を入れることになっていて、ここには特別に水に強く、硬度の高い木材が選定され入れられている。


新型: デッキ側のモールドと一体になったマストステップ取付部。マストを支えるサイドステー、フォアステーはそれぞれデッキ側を基準に取り付けられているので、マストステップ取付部も同じデッキ側になることで船にまっすぐにマストが立ちやすくなる。
またキールソンと併せて2層のFRP面があるためマストステップ取付に使うネジもよりしっかり長く取り付く。

マスト周辺のデザインはこの様になっています。ジブハリヤードのテンションによってステーが上に引っ張られる力と、マストが下方向に押し付けられる力に耐えれることが主に考えられています。

まだこれだけではないですが、いったんここで区切るようにします。

次回はこれ以外の部分について見ていきますよ。お楽しみに。





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